春の七草の一種『ハコベ』

日本には真冬の時期、春の七草を用いて「七草粥」をいただく風習があります。日当りの良い草地や畑に生えるビタミンやミネラルが豊富な緑色の春の七草を摘み取り、正月からごちそうで疲れた胃腸をいたわり、1年の邪気を払い、新年を無事迎えた喜びと感謝、祈りをささげるための行事です。

▲左上からすずな、すずしろ。左下からほとけのざ、はこべら、ごぎょう、なずな、せり。

春の七草とは、「芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、蘩蔞(はこべら)、仏の座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)」の7つの植物をいいます。

現代では1月7日を七草粥の日といいます。古くは旧暦の2月中旬に芽を出し始めたばかりの植物たちの若芽にやどる生命力をいただく食養生信仰でもあったようです。この風習は平安時代ごろからとされており、江戸時代も七草を茹でたものを良く搾り包丁でとんとんと叩きお粥に入れて炊きあげて食べたそうです。

今では七草セットはスーパーマーケットなどにも並び、簡単に手に入れることができます。

▲ハコベの葉

ハコベはチックヤードという名前でもわかるように「小鳥のごちそう」としてフランスでも市場に並ぶ植物で、一年身近に中見る事が出来る野草の一種です。

江戸時代の山形藩では「かてもの(飢饉の時のかさましの食材)」として用いられていたそうです。小さな葉を口に含むと、くせがなく思いのほか美味しいサラダ菜の一種のように味わう事が出来ます。少量の生葉をサラダに散らしていただく事も出来ます。

ハコベ塩の楽しみ方

採取したハコベを乾燥させてすり鉢などで細かくしたものと塩を適量混ぜます。これを歯茎の止血、歯槽膿漏、歯痛などに歯磨き粉として、または歯茎に摺り込んで利用します。

 

七草粥の楽しみ方

七草を塩でアク抜きし茹でた物を細かく刻み、粥に入れていただきます。米と水を1対10の割合で鍋で15分ほど良くかき混ぜながら煮て、細かく切ったすずな(カブ)とすずしろ(ダイコン)をくわえ、好みの固さまで煮てから刻んだ七草を合わせてひと煮する方法でもいただけます。お好みでゆかりや梅干しを加えても。

鈴木さちよ

1月のハーブ:チックヤード(ハコベ)

和名:  ハコベ

学名:  Stellaria media

別名:  スターウィード

原産地: ユーラシア大陸

分類:    ナデシコ科/ハコベ属

花言葉: 愛らしい、密会

特徴:
日当りのいい草地に湿った土地に生える、高さ10~40センチ程の草。分岐した茎に白い小さな花と柔らかい卵形の葉をつけます。

利用:
収斂、止血、鎮痛、抗菌、解毒、美肌作用を有し、歯茎の止血、歯槽膿漏の予防、歯痛、打ち身、腫れ物、湿疹、産前産後、月経過多、痔、鼻血、切り傷などの出血症状、腹痛、腰痛、神経痛、冷え、肌荒れなどにひろく適応されます。全草を乾燥して煎じて服用したり、生葉を熱湯で浸出して服用します。解熱や傷を治したい時に全草をつぶして、関節炎リューマチのハップ剤にします。抽出液は、皮膚の炎症や湿疹の改善に利用します。塩と共に歯磨き粉としても利用出来ます。

参考文献:
ハーブの図鑑/萩尾エリ子著/池田書店
自分で採れる薬になる植物図鑑/増田和夫著/柏書房
日本のハーブ事典/村上志緒著/東京堂出版
日本人が大切にしたいうつくしい暮らし/井戸理恵子著/かんき出版

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